ジムとコース料理

5月8日は、月曜日。通勤中の景色には、連休明けでどんよりしているみんなの重たい気持ちが、いたるところにもくもくと漂っていたような気がします。

 

連休明け、とはいっても、仕事はいつも通り進みます。今日も無事に終わりました。さて、家に帰ろう、帰ってほかほかのお風呂に浸かろう、ささやかな夕食を食べよう…

 

と、その前に、最近仕事終わりによく寄る場所があります。公営のジムです。

 

実は半年前くらいに、健康維持とダイエットのために、少しの間通っていたのです。少しの間、と書いたのは、何を隠そう、そう長く続かなかったからです。ダイエットって、なんて面白くない行為だろう。おいしそうな食べものがこんなにも溢れている現代で、太るなという方が難しい。

 

思うに、ジムって行くまでが本当につらい。なんでこんなつらいことを好き好んでやる人種がいるんだろう、すぐ手の届くところにこんなにたくさんおいしいものがあるのが悪いんだ、私は長生きするよりも、好きなものを好きなだけ食べて、刹那的に生きたいんだーーーそんなことまで考えるくらいです。

 

ところが、運動した後のスッキリ感、これが本当に素晴らしい。個人的には、汗をかけばかくほど爽快感が強い。つらいつらいと思っていたことを成し遂げた達成感は、自己肯定感や自尊心にまで響いてくる。なんだか背筋が伸びて、気持ちまで前向きになってくる。そして何より、とてもよく眠ることができる(まあ、すぐにその魔法は解けてしまうのですが)。

 

最近、気分がずっと沈んでいたし、そういう時こそ運動が良い、と聞くので、また再開してみることにしました。

 

ジムにはいろんな人がいます。このジムは、若い人よりも中高年の方が多いのが印象的です。トレッドミルやエアロバイク、そしてひと通りの筋力トレーニング器具が揃っていて、皆がそれぞれ、自分のメニューに取り組んでいます。なかにはディズニー映画・美女と野獣に出てくる「ガストン」みたいに、鏡に映る自慢の力こぶをうっとりと眺めているような人もいます。

 

みんなそれぞれ運動に必死なので、誰かが話しかけてきたり、談話していたりすることはまずないのですが、ごつごつとした鉄が組み合わさってできた怪物のようなトレーニング器具の前でうろたえていると、『器具の使い方が分かりませんか?』と、たいていスタッフが駆けつけてくれます。そして、とても丁寧に優しく使い方を教えてくれます。

 

いや、それが親切なことには変わりありません。事実、教えてもらわなければ正しい方法でトレーニングができないので、とても助かるのです。が、どうもその「えっと…これはどうやって使うんだ…ああ、どうしよう…」と器具の周りをうろうろしている姿を見られるのが気恥ずかしくて、いつもちょっと心がちくちくします。

 

この感覚、見ていないようで実はずっと見られている感覚、何かに似ているーーそうだ、ちょっといいところでコースを食べるときだ。あれも、次の料理を最適のタイミングで配膳するために、スタッフの方がちらちらこちらを見ているんですよね。私は拙いテーブルマナーを見られている感覚が本当に恥ずかしくて、せっかくの美味しい料理もうまく喉を通らない気がしてくるのです。そんな小さなこと、気にしないのが一番なのはよく分かるのですが、なぜか気になっちゃうんですよね。

 

ジムにチェックインしようとしたとき、受付の女性が「あら!久しぶりですね」と言いました。私がここに通い始めた頃、よく器具の使い方を教えてくれていた人でした。はりきって通い出した頃を知っている人に、『ああ、この人続かなかったんだな』と思われているような気がして、また心がちくちくするのでした。でも、今回は頑張らないとなあ〜。