図書館に行った日

2月20日、朝起きるとリビングが爽やかな甘酸っぱい香りでいっぱいでした。週末、たまたまスーパーでかりんの果実を見つけたので、かりん酒を仕込んだのです。初めてかりんの香りを知りましたが、どんな果物よりも素晴らしいと思いました。我が家は時おり果実酒を仕込みます。完成まで長い時間がかかるけれど、待てば待つだけおいしくなるので結構好きです。

 

最近買って著しく生活の質を上げてくれたコーヒーマシンでアメリカンコーヒーを飲んだあとは、ファミレスでスパゲティを食べました。ひとりでご飯を食べるのは現代人に与えられた最高の癒しであると、あるドラマは言っていますが、確かにその通りだと思います。家族と囲む食卓もいいですが、たまにこうしてひとりでゆっくりと食事をしたくなります。

 

食事のあとは街の図書館に行きました。本はあまり読みませんが、好きなほうです。子どもたちに読ませる絵本を借りにきたのですが、私も少しゆっくり本と戯れてみることにしました。

 

この図書館は幼い頃によく連れてきてもらいました。今よりも、子どもの頃のほうがもっと本が好きで、小学校の昼休みにはひとりで図書室に入り浸ったものでした。児童向けのファンタジー小説が大好きで、妖精をテーマにしたディズニーの小説シリーズは肌身離さず持っていたほどです。就職し、忙しくなるにつれどんどん活字から離れていきましたが、今の私を作ってくれたのは間違いなくあの時の本たちだろうと思います。そんなエモーショナルな気分になりつつ、図書館に入りました。

 

本棚の間に、ところどころ自習机やソファが置いてあるなかで、お気に入りの机があります。そこは目の前が窓であり、広場に面していて、目の前に噴水と銅像が見えるのです。タイミングが合えば、窓が少しだけ空いているときがあって、水の音を聞きながら本を読めるのです。そんなときは大好きな作家のエッセイや、たまたま見つけた素敵な表紙の本を持ってきて、しばらく読みふけります。噴水にたまった水みたいに、時間が止まったような、ゆったりとした気持ちになれます。もちろん、今日もそこに座りました。

 

私的な調べものをしたあと、さまざまな本を持ってきてはその机で読みました。観葉植物の歴史、西洋美術の見かた、ワインのアロマ、雑草図鑑。大学時代から雑学を学ぶことにハマっているので、この類の本が大好きです。

 

もっぱらエッセイばかり好むので、内田百聞の短編集も読みました。昔の仮名遣いですが、簡潔な文章で読みやすいので好きです。「第一阿呆列車」も面白かったです。

 

パラパラとめくってみて、続きが気になったので一冊だけ借りてきました。いろいろなものの文化史の本で、ずらっと何十巻もシリーズがあるなかで、「狐」の巻を選びました。民俗学的な話題にはかなり惹かれるものがあります。この本が面白かったら、地道に他の巻も読んでいこうかなと思いました。

 

久々に活字の海に溺れた休日。精神病にかかってから、読書はエネルギーを使わなければできなくなりましたが、それは価値のある作業なのだということには変わりありませんでした。あくまで私にとってですが、言葉は心の栄養です。とてもいい時間を過ごせました。